工事仕様:手水鉢、筧、蘭渓灯篭
工事住所:みよし市
自然石の水鉢が、趣ある空間を創り出している蹲(つくばい)です。
蹲の本来の役目は、茶室に進む露地において口をすすぎ手を洗うことで、身も心も清めることにあります。しかし、一般の和風庭園では、景のポイントとして作られることが多いようです。
蹲の構成には、基本的な構えの向かい鉢形式、水鉢の姿が見えるように排水の海の中に置いた中鉢形式、流れの中に水鉢を置く流れ形式があります。
水鉢の種類には、古い石造美術品の一部分や古寺の礎石に水穴を穿った見立て物、水鉢として作られた創作型、形の良い自然石に水穴を穿った自然石があります。庭師や茶人は、その庭に合った形式や水鉢を選び、蹲を作り上げます。蹲は、庭師や茶人にとっての腕の見せどころと言えるでしょう。
写真の蹲は、中鉢形式の自然石水鉢ということになります。水鉢の姿全体を見ることができるので、自然石の形の面白さや石についた苔の趣、水鉢から水が落ちる様などを鑑賞することができます。水鉢を廻るように流れる水が涼しげです。
中鉢形式は、このように水鉢全体を鑑賞したい時に用いられる形式です。茶の蹲には基本的な約束事がありますが、それを知った上で、それぞれの庭に合わせた蹲に崩して楽しむことができます。
工事仕様:信楽焼水鉢、木曽石飛石、シロミカゲ砂利敷
工事住所:名古屋市名東区
緋色の信楽焼の水鉢が、白御影石の砂利敷きに映える庭園です。
このお庭のフォーカルポイントとなっているのは、オリジナルの信楽焼の水鉢です。信楽焼は、滋賀県甲賀市信楽を中心に作られる陶器です。信楽は茶湯が発展した京都や奈良に近く、焼き物に適した陶土が豊富にあったことから、信楽焼が発展したと言われています。
信楽焼は、土中の鉄分が赤く発色する火色(緋色)が特徴で、それに灰の降りかかりやビロード釉、焦げなどの炎が生み出す独特の焼き上がりが加わり、素朴さの中に独特のわびさびの趣があります。
陶土に可塑性とこしがあるので、大物や肉厚のものを作るのに適しています。その歴史は古く、天平時代に始まり、室町・安室桃山時代には茶道具の生産が盛んとなり、後に多種多様な生活雑器が作られるよになります。
現在では、日用陶器の他、建築用タイル、置物、庭園陶器、衛生陶器など、大物から小物まで適した技術開発が行われ、独特のわびさびを残しつつ生活に根ざした陶器が作られています。
このお庭に置かれた水鉢も、大物に向いている信楽の特徴を活かし、柔らかく温かな表情の中にわびさびを感じられる水鉢となっています。
周りに敷かれた白御影石の白さが、信楽焼の水鉢の緋色をより緋く見せています。筧から落ちる水が作る波紋が、水鉢の縁と調和し、美しい円を描いています。植栽の緑と水鉢の緋色のコントラストがまた美しく、お互いを引き立て合っています。
工事仕様:濡れ鷺型灯籠、木曽石組、木曽石飛石
工事住所:名古屋市中川区
濡れ鷲型灯籠のある和庭です。
灯籠とは、元来神前や仏前に灯火を献ずるためのものです。石灯籠が、照明と添景のため茶庭に取り入れられられるようになった後、庭園の添景物として用いられるようになりました。
「実」から「実」と「美」へ、そして「美」のみに役割が変化してきたのです。
石灯籠の標準的な形は標準型は、上部から、玉ねぎ状の宝珠(ほうじゅ)、火袋の屋根になる笠(かさ)、灯火が入る火袋(ひぶくろ)、火袋を支える中台(ちゆう だい)、それらを支える柱の竿(さお)、最下部で足となる基礎で構成されます。また、石材は、御影石が最も多く使われています。
石灯篭には様々な種類がありますが、写真のお庭に置かれている石灯篭は、濡れ鷲型灯篭です。濡れ鷲型灯篭は、楕円を半分に切ったような笠が、霧雨の中に立つ鷲の姿を連想させることから、こう呼ばれています。
笠には6本の筋が付き、四角い露盤の上に先の尖った宝珠がのっています。竿と呼ばれる最も長い柱の節が、中央で外側に膨らむのも濡れ鷲型灯篭の特徴です。
この石灯篭は、幅の広い和庭のフォーカルポイントの一つになっています。優雅なその姿は、風景に趣を添え、庭全体を格調高いものにしています。
工事仕様:蹲、筧
工事住所:可児市
趣ある蹲が、清涼感を呼ぶ庭園です。日本人なら、見慣れた風景ですが、蹲とはなんでしょう?そんな方に、蹲(つくばい)について、簡単に説明します。
蹲(つくばい)とは、日本庭園の添景物の一つです。もとは、露地という茶庭に置かれ、茶室に入る前に手を清め、口をすすぐために置かれた背の低い手水鉢(ちょうずばち)に役石を添えたものの総称です。一般的には、「手水鉢」、手水鉢手前に手を清めるときに乗る「前石」、左右に手燭を置くための「手燭石」と湯桶を置く「湯桶石」(この3つを役石と呼ぶ)、手水鉢と役石に囲まれた「水門」で構成されます。這いつくばるように身をかがめて手を洗う様から、蹲と呼ばれるようになりました。また、手水鉢に水を導く竹や木でできた樋を、筧(かけい)と言います。
蹲は、現在は筧と共に、和風庭園を構成する要素として用いられることも多くなりました。そのため、約束事にとらわれず、自由な発想の様々な蹲が、それぞれのお庭を演出しています。
写真のお庭の蹲は、手水鉢、役石、水門、筧で構成された、本格的な蹲です。苔や雑木が、蹲の涼やかさを一層際立たせています。清らかな水の流れと、趣のある手水鉢、巧みに配置された自然石が、心まで清めてくれるような気がします。